MIZZBLO

音楽、お笑い、テレビ、ラジオ

【ややネタバレあり】「さよならたりないふたり」感想

 オードリー若林正恭南海キャンディーズ山里亮太のユニット「たりないふたり」、その五年ぶりのライブ「さよならたりないふたり」のライブビューイングに行ってきた。形容する言葉が見つからないくらい良かった。とにかく笑い、笑い疲れた。
(以下ネタバレを少し含みます。テレビ放送を新鮮に楽しみたい方は見ないで下さい)


 事前打ち合わせ無し、ステージ上での1時間の相談タイムも若林が放棄しいきなりアドリブ漫才スタート。基本若林ボケ山ちゃんツッコミで、若林が投げる設定や展開に山ちゃんが食らいつくスタイル。山ちゃんの結婚という大きなトピックを軸にしつつ、他の要素も盛りだくさんな80分+30分(くらい?)。

 テレビの鎖から解放された若林はMC業で溜まったストレスを爆発させるがごとく暴れ回っていて、その姿はもはや狂気。蒼井優ネタを始め、山ちゃんを余すとこ無くいじり倒し、ケタケタと高笑いする。大ファンの俺ですらちょっと怖くなった。

 最初は振り回されていた山ちゃんも徐々にエンジンがかかり、若林をいじり返したりボケに回ったりと大立ち回り。最後は好感度のストッパーを完全に破壊し、結婚前と変わらぬ変態性をこれでもかと見せつけていた。

 漫才の中で若林が提示していく設定はどれも抜群に面白くて、この人はテレビタレントである以上に漫才職人なんだなと思ったし、山ちゃんのツッコミのセンス、バリエーション、なによりアドリブへの対応力には脱帽するしかなかった。

 スーパー実力者とスーパー実力者の相性が完璧なんだから面白くない訳がない。おそらく、春日を一番面白くできるのは若林だし、しずちゃんを一番面白くできるのは山ちゃんだけど、このふたりにとってのそれはこのふたりなのかもしれないとすら思ってしまった。(両コンビのファンの人すみません。オードリーファンの俺ですらそう思うくらい面白かったってことです)

 「人見知り」「飲み会が嫌い」...社会性や人間性が「たりない」ふたりが意気投合して始まったこのユニット。お互い歳を重ね、立場が変わり、背負うものが増え、「たりない」と言ってばかりもいられなくなった。しかし、若林曰く「新しい環境では皆新人」で、誰しも常になにかがたりないというまとめも深く胸に刺さった。
 
 そして、このライブにはもう一つのドラマがあった。それはヒップホップユニット・Creepy Nuts。山ちゃんのラジオ番組「不毛な議論」のヘビーリスナーだったR-指定と、「オードリーANN」を日々の支えとしていたDJ松永の二人は、初期の「たりないふたり」と自分たちを重ね合わせ、「たりないふたり」という楽曲を自主的に制作した(彼らのたりなさは、楽曲やラジオを聴けば分かる)。そこから月日は流れ、当時より大きくなったCreepy Nutsはライブ側から「たりないふたり さよならver.」の制作を正式に依頼されたのだ。この曲の内容も、最新の山ちゃんと若林のネタがふんだんに盛り込まれていて素晴らしかった。間違いなく、もう一組の「たりないふたり」もあのステージで輝きを放っていた。
 
 こうして振り返ってみて改めて思う。お笑いにもらえるものは笑いだけじゃない。驚き、興奮、感動。こういう感情を味わえるなら捨てたもんじゃないと思った。また味わわせてくれるよね?たりないふたり、さよならじゃないよね?次にライブをやるとき、ふたりには何がたりてて何がたりないんだろう。第二章を楽しみに待っていよう。